2010年5月30日日曜日

THIS IS IT

先日念願のPS3を購入したので、やっと事前に買っておいた「THIS IS IT」を見た。

改めてマイケルの凄さを痛感。と同時に、これが最後のマイケルの姿だと思うととても残念だ。
ブルーレイ版を買っておいてよかった。

その中で、とても勉強になった場面がある。

ダンサー、バンド、スタッフ、みんな世界トップレベルの人たちばかり。スケールも桁違いにでかい。バンドセクションには、バンドのスーパーバイザーがいて、すべてこの人の指示でバンドが動き、マイケルと意見を聴き、音にしていく。 同じように、各セクションにもスーパーバイザーがいて、マイケルとセクションの間に入り、ステージを作り上げていくわけだ。そして、そのスーパーバイザーたちを制作総監督であるディレクターが束ねている。

簡単に書くとこうだ。

実際には、アシスタントディレクターや、もっといっぱい人が動いてるし、衣装や照明、音響、効果、映像など、セクションももっともっとある。

セクションに問題があれば、マイケルからディレクターに要望が出て、そのセクションのスーパーバイザーにディレクターが要望を出す。もっと細かいニュアンスを伝えるとなると、マイケルとスーパーバイザーが直接意見交換をするという仕組み。

マイケルに限らず、すべてのコンサートはこんな組織系統で運営されていると思う。日本のアーティストのコンサートも。演劇やミュージカルもそうだ。

で、
このディレクターやスーパーバイザーが非常にいい仕事をしてくれるわけだ。
ある場面で、マイケルがイヤーモニター嫌そうに外す場面がある。
13年ぶりのコンサートなので、その間に音響機器は発達し、モニターはイヤーモニターを使うのが主流になった。多分マイケルははじめてこのモニターシステムを使うんだろう。
マイケルは
「これじゃ歌えない。まるで耳の中に拳をつっこまれているようだ。」と言う。
「怒ってないよ。愛だ。」
「意図は分かるけど、慣れてないんだ。」というマイケルもすごく謙虚ですばらしい。
アレだけのスーパースターなのに、ちゃんとミキサーに対しても気を使っている。あんなにスタッフに気を使うアーティストもなかなかいないのではないだろうか?

そこで、ディレクターだと思われる声がする。
「マイケル、もう一度ちゃんと言ってくれ」
「ミキサーはどうすればいい?音量やバランスで解決できるかい?」
「モニターのボーカルをもう少し上げようか?」

マイケルはこう答える。「もう少し音量を下げてみて。次の曲で試してみる」と。

非常にすばらしいやり取りだ。
特に「もう一度ちゃんと言ってくれ」ってのがいい。
アーティストはエンジニアではないので、モニターの音をどうすれば歌いやすくなるかは、あまり分からない。だから抽象的な表現になってしまう。「耳に拳をつっこまれているようだ」というのがマイケルの表現だ。
これに対して、エンジニアは音量がデカすぎるからなのか、音質が硬いからなのかを想像するはずだ。歌えないといっているので、自分の声がもしかしたら小さいのかもしれない。いろいろエンジニアは考えるのである。
そこへ、ディレクターなり、スーパーバイザーが「ちゃんと言ってくれ」とアーティストにいう。つまりもっと具体的に言ってくれとアーティストに要求するわけだ。いきなり具体的にといっても、それが分からないから困るんだが、その後にいくつか選択肢を与えているのがいい。アーティストはいくつかの候補から選ぶだけでいいわけだ。それが間違った選択であっても、何回か繰り返すうちに解決できるはずである。

こういったやり取りが、アーティストとエンジニア間で常に出来ていれば、かならずいいステージが出来る。コミュニケーションが非常に大切であるということのいい例だ。

 よくあるのが、セッティング完了したステージにアーティストがやってきてリハーサルを開始する。
専属オペレーターならアーティストの好みを知っているのでいいが、初めて仕事をするようなアーティストの場合は、好みがよく分からない。だから万人受けするようなモニターセッティングで準備しておく。5割はそれで大体良いというが、5割は不満そうな顔をする。
 なんどもプロの方とも仕事をしているが、モニターの好みは本当に千差万別だ。自分の音はいらいという人もいれば自分の音しか要らないという人もいる。
 なにが不満か言ってくれればいいが、アーティストもエンジニアの技量を測りかねているのか、初対面で遠慮しているのか、そのままリハーサルを終了することもある。つまり言っても分かってくれるだろうか?とか、言いにくいというのが本音だ。

 東京でプロでやっていて、地方公演で地方のライブハウスに行く。酷い環境のところもいっぱい経験するのだ。ピアノは調律されておらず、PAも店のアルバイトの学生が見よう見まねでやっている。機材もノイズが多く何十年も前のものばかり。
 そりゃ、何度かそんな現場を経験すると警戒したくなるものだ。このオペレーターは大丈夫なのか?こちらの言ったことを理解してくれるのか?それだけの設備があるのか?とね。

 ワタクシはエンジニア側の人間だが、たま~に出演者側になったりするのでアーティストのそんな気持ちもよく分かる。実際、はじめてのオペレーターの方だと警戒してしまう。気持ちのいいモニター音ではないけど、何とか演奏できるなら言わないかも・・・・。同業なので、気を使ってしまうのもある。

 今月のプロサウンドにスカパラのステージ記事があって、そのモニターエンジニアの方も、アーティストのコミュニケーションが大切だと言っておられた。何か言いたそうな顔をしているとコチラから聞いてあげるとか、常に意見を言いやすい環境を作ることが大切だと。
 普段ワタクシも、リハの途中でモニターは大丈夫ですか?と聞くようにしている。聞くと案外意見を言ってくれるものだ。表の音も大事だが、アーティストが気持ちよく演奏してくれてこそのライブだと思うので、モニターの音には常に気を使っている。
 乱暴な言い方で怒って意見を言う人もいるが、遠慮して何も言わずに本番に臨むほうがお客さんに悪いですね。
 まぁアーティストもエンジニアも、お互い人間なので物の言い方っていうのは大切だと思いますよ。言葉はコミュニュケーションの道具ですからね。


「怒ってないよ、愛だ。」っていうマイケルはとっても素晴らしいというお話。





2 件のコメント:

  1. いつからやったか、もうすぐ3回目の劇場公開がありますよ〜!
    うきうきでまたしても行ってしまいそうだ。
    舞台監督兼この映画の監督でもあるケニー・オルテガの発言ですね↑。
    ちゃんと語尾にSirをつけたりしてマイケルを尊重しているのもすごくよいと
    思いました。何でもLOVEで括ってしまうマイケルも不思議ちゃんですが 笑

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  2. たしかに劇場で観たいと思ったよ。

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