2008年3月31日月曜日

バイオリンの録音

昨日、テレビで映画タイタニックを見てて感心した。
それは、船の中で演奏しているあの楽団の音なんです。

バイオリンの音が凄い!

バイオリン自体の音というのではなくて、録音がすごいという意味です。まぁ、楽器自体もたぶん良いものでしょうけど。

バイオリンってクラシックのイメージが強いですが、実は結構いろいろなジャンルの音楽に使われています。あまり意識していないですが、実はわりと耳なじみのある音なんです。

で、非常に個人的な意見なんですが、バイオリンがバイオリンらしく録音された物って少ないような気がするんです。

そういう言い方だと弊害があるのかな、、?

簡単に言えばバイオリンって生で聞くとイメージしてたよりマイルドな音なんです。ボディー自体が鳴っているのが良く分かります。(僕がそう思っているだけかもしれないので、違うよって思う人は聞き流してくださいね。)
生音を真近で聞くまでは、僕の中でバイオリンのイメージは結構ヒステリックな音だったりしました。鋭い高音でなんというか切れ味がいい感じです。

どんな楽器も、もちろん人の声もですが、あらゆる音は録音されると絶対に生音とは違う音になります。(あたりまえですが、、)
音の波をマイクなどで一旦電気信号に変えて、アンプなどをあらゆる電気回路を通って再びスピーカーで音の波に変えられるんですから、もちろん本物とは違うものになります。

それをどう本物っぽく聞かせるかというのが、ミキサーなどエンジニアの仕事だと思っています。

バイオリンって音を録るだけなら、そんなに難しい楽器ではないと思うんです。音はそこそこ大きいし。ではなぜ生音とイメージする音が違うんでしょう?
たぶん、収録の方法によるものなんだと勝手に想像したりしてます。

概ねクラシックの録音というと、比較的オフマイク(マイクを楽器から離して収録すること)が多いんです。オーケストラなんかだと会場の天井からマイクを吊り下げて録音したりします。

音は高い音ほど遠くまで飛んで行き、低い音ほど遠くまで飛ばない性質を持っています。

なのでオフマイクだとどうしても高い音が多く収録されてしまいます。マイク自体も近接効果といって近い音ほど太く、離れるほど音が細くなります。カラオケなどでマイクを口に付ける勢い(オンマイク)で歌うと太い声になり、マイクから口を離して(オフマイク)歌うと細い声になるのがその現象です。

つまり、多くのバイオリン収録のものはオフマイクのものが多いんではないでか?もちろんオフマイクがダメだとは思っていません。オフマイクだとその空間の響きも拾うので臨場感のある音が録れるという利点があります。逆にオンマイクだと全体にベタっとした平面的な音になりがちです。

クラシックなんかは、録音が全てです。ロックやポップスのように録音したあとからエコーなどの加工はほとんどしません。なので、オーケストラなどは響きの良いホールで一発録りだと思います。そうするとやはりオフマイクがいいと思います。

・・・・・・

なんか話がややこしくなってきた。

結論をいうと、生で聞くとマイルドに聞こえるのは、胴鳴り(箱鳴り)も一緒に聞こえてくるせいだと思うんです。
バイオリンは弦楽器で、弓で振動させた弦の音をボディーで共鳴させて増幅しています。このボディの鳴りというのがなんとも木の響きで心地よい。他の弦楽器も一様にそうだと思います。
タイタニックに登場した楽団の音が、この箱鳴りをかなり再現されていてびっくりした。生音っぽく聞こえます。テレビで聞いてても箱鳴りが聞こえてくるのは、録音した人やエンジニアの腕なんでしょうね。いやぁ、凄い。

クラシック系の演奏家の方は、なんとなくオンマイクを嫌う傾向にあると思いますが、どうせマイクを通すと生音とは違う音になるんです。要は収録の形が大事じゃなくて、どう生音っぽくうまく聞かせるか(耳をだませるか)だと思うんです。ボディーの箱なりを拾うにはオンマイクが必要だと思うのは僕だけなんでしょうか、、、?もちろん響きや弦の鳴りを拾うオフマイクも同時に必要です。

タイタニックをこんな風に見た人ってそんなに居ないんだろうな、、、。





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6 件のコメント:

  1. クラシックファンですが、全くおっしゃる通りです! ジャズファンはオンマイク、クラシックはオフマイク的な音と勝手に決めつけられ、ほとんどのCDがその様に録音されるので堪りません。ヴァイオリンがオンマイクで録音されているクラシックのCDは極端に少ないです。私が持っているものの中では、ローラ・ボベスコの「サロン・コンサート」とグレゴリオ・パニアグアの「フォリア」の一部だけです。どちらも絶版もしくはそれに近い状態です。クラシックの奏者がオンマイク録音を嫌う理由は、アラが出るからです。
    なので、ヴァイオリン好きはCDでもLPでもなく、SPレコード(昔の78回転のやつ)に行ってしまいがちです。これだと、当時のマイクの性能と録音の限界から、ほとんどすべてオンマイクです。また、SPレコードをうまく復刻したCDからもオンマイクで録音したヴァイオリンの音は楽しめます。
    大昔の日本オーディオ協会の会長、池田圭先生も「SPでは聴けるのに、LPでは生々しいヴァイオリンは聴いたことがない」とか「昔の録音のコンセプトは奏者に自分の部屋に来てもらうことだったのに対し、今は自分の部屋をコンサートホールにしようとしている」等、重要な発言をしております。

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  2. おお~!賛同していただける方がいらっしゃった!!
    SPレコードがオンマイクなどというレアな情報ありがとうございます!知りませんでした。目から鱗です。
    状態の良い楽器を目の前で聴いたりするとうっとりしますよね。あの木の響きがなんともいえないです。

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  3. コメントありがとうございました。
    ヴァイオリンだけでなく、フルートも、オーボエも、クラリネットも、ギターもオンマイクが一番いいです! フルートは何度もプロの生演奏を目の前、鼻の先で聴かせてもらいましたが、それこそコンサートでは味わえない喜びを感じます(一流シェフの出来立ての料理を味見する感覚)。そう言えば、昔は王様が奏者を呼んで、自分のサロンで演奏してもらってた訳です。つまり、楽器の音のベストの状態を楽しんでた訳です。ところが、音楽がどんどん庶民のものになるにつれ、大勢の聴衆に聞かせるようになって来た訳です。2000人のコンサートホールでヴァイオリンの独奏とか… そうなると、浸透力のあるストラディヴァリでも貧弱に聞こえたりします。もちろん、私も庶民ですが、庶民文化が栄えるとクォリティが薄まるというのは事実です。大勢のために…となると、どうしても… なので、私はSPレコードの復刻CDばかりを古い装置で聴き、ヴァイオリンではないですが、ヴァイオリンみたいな古い楽器を自分で弾いて、薄められてない濃い味!を楽しんでおります。三松商店さんが指摘しておられるポイントは、オーディオ好きなら真っ先に注意すべきポイントなのに、ほとんど誰も指摘しないのが不思議なぐらいです。

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  4. そうですね。僕もオンマイクの音源にあまり出会わないと思っていました。
    僕はオーディオに詳しいわけでもクラシックに詳しいわけでもありませんが、思うに、多くのクラシック音源はコンサートホールを再現しようとしているんだと思います。つまり客席の良い位置で聞いている人の感じを再現しようとしているのだと。
    それはそれで、たぶん最大公約数的な録音の見解だと思います。オーケストラのスコアは各楽器の音のかぶりまで計算して作成されていると思うんです。つまり全ての楽器が一塊になってこそ本来作曲家が意図した音楽になるんだと。それを収録しようとすれば自然とマイクを離さなければいけなくなる、、、。
     人間の耳とマイクは所詮別もので、マイクには近接効果という特性がある。よく言われるのが、方耳をふさいだ状態で聴く音がマイクで収録される音に近いということです。
     人間は両耳で音を聴いて、その距離や方向を計算し、場合によっては演算処理をして音を補填する能力があります。しかしこの補填の部分が人によって好みがあるし、その時の気分でも変わってしまうのが曲者です。
    「今日は残響たっぷりで広がりのある音で聞きたい」と思えば、そういう演算処理が施されるだろうし、「今日は残響なしのタイトな音でしかもチェロのパートを聴きたい」と思えば、そういうふうに処理されます。
     人によってさまざまな聞き方ができるように、全体を収録するというのは間違いではないと思うんです。

    ただ!!
    たまには挑戦的な音源があってもいい!

    今回のタイタニックもそうですが、映画のサントラは比較的エンターテイメントよりに録音されているので聞いていて面白いです。録音もスタジオでされているものが多く、比較的タイトな音になっていると思います。クラシックもそういう方向性で収録しているのがあってもいいんじゃないでしょうか。

    おっしゃるように、薄められてない濃い味の有名楽団によるクラシック音源が聴いてみたいです。

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  5. テレビの物真似でいろいろな声を出す芸人がいますが、その「いろいろな声」を声紋分析してみると、なんと、全部その芸人本人の声でしかない!なんてことになるそうです。よく考えれば、別の人の声を出すなんて物理的に不可能ですよね。もっと極端に言うなら、人間はどうがんばってもライオンみたいに吠えられないし、カナリアみたいにさえずれないです。

    これと同じことがマイクやスピーカーの振動板で起きてます。ヴァイオリンは弦があって、胴があって、弓で弾いて、音が作られる。しかし、スピーカーのコーン紙はオリジナルと同じ仕組みで音を作ってくれない。紙やアルミやポリプロピレンでは引っ掻く音や、擦る音や、胴鳴りの音は出せない! だからといって、再生音楽を全否定することもまた出来ません。音は本来、出ては消えるものですが、良い演奏だといつまでも取っておきたいし、たとえ中途半端であっても気が向いた時にまた再生してみたい!

    確かに、理論的にはオーケストラはオフマイクで録音するしかないですが、現実は、マイクを数十本使い、それぞれのセクションをオンマイクで(しかもモノーラルで)録音し、あとでミキシングとエコー処理しているCDが多過ぎです。そして、独奏や小編成の場合はオフマイクで録音と、なんだか矛盾してます。オフマイクで録音した音源はあとでオンマイクに見せかけることが難しく(たぶん、不可能)、オンマイクで録音しさえすれば、あとでオフマイクに見せかけることは比較的簡単です。だから、録音の基本はオンマイクです。

    原音でなくスピーカーから出た音を録音し、再びスピーカーで再生し、またそれを録音し…と繰り返して行くと、マイクはどんどんオフにならざるを得ません。どんどん近づくなんてムリです。だから、オフマイク録音によって失われたものは二度と戻って来ないのです。ああ、音楽にとって一番大切であるはずの感動を返してちょうだい!と叫びたくなるようなCDが結構あります(涙)

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  6. 以前、こんな経験をしました。

    マンドリンとピアノのDuoのコンサート。会場はショールーム。ステージもなく客席は臨時のパイプ椅子を楽器を中心に270度くらいのらせんに状に配置されています。
    「マンドリンの音がピアノに比べて小さいからマイクを立てて拡声してくれ」というオーダーで現場に呼ばれました。
    マンドリンだけを拡声した場合、聴衆にとってマンドリンの音はほぼスピーカーから聞こえることになります。聞く場所によってはそれでよいバランスに聞こえるかもしれませんが、ほとんどの席から聴く音楽はピアノはピアノからの生音、マンドリンは最寄のスピーカーから出る音となるわけです。
    これではバランスも定位もあったもんじゃありません。つまり、多くのお客さんはマンドリンはオンでピアノはオフで聞こえてしまう訳です。

    そこで、ピアノにもマイクを立てて、薄く足すことで多少なりとも自然なバランスと定位で聞こえるように調整しようとしました。

    そしたら、その公演を仕切っている音楽評論家の方がすごい剣幕で僕のところに来て、ピアノのマイクを撤去しろというわけです。まだ音を出す前にです。
    「クラシックは生で聴く音楽だからマイクを立ててはいかんのだ。」とおっしゃるのです。マンドリンは音が小さいから仕方ないのだと、、、。

    まぁ確かにクラシックは生で聴くもんだけど、ここはコンサートホールでもないしバランス悪いですよといくら説明しても、音はともかくマイクがピアノに立っているビジュアルが悪なのだというわけです。
    仕方ないのでマイクは撤去しましたが、やっぱりバランスはむちゃくちゃでした。
    つまり、収録時にいろんな方面からの圧力でマイクを近づけられない状況ももしかしたらあるのかもしれません。

    しかし、小編成に限ってオフマイクというのは何なんでしょうね?

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