2012年11月22日木曜日

マルチカム編集で質問を承りました。


こんな質問をいただきました。


マルチカム編集の場合それぞれのカメラのマイクで音を収録しているのでカメラを切り替えた際に、音質が変わったり、周りの音の変化が大きく聴いていてとても不自然なのですべてのカメラの音をミックスしようと思っていますが、ミックスするとどうしても音が大きくなるので小さくして調整していますが基準が分からないのでテレビで見たときに音量が大きすぎたりしないか心配です。

また、すべての箇所をミックスしているわけではないので何度も視聴者側が音量調節をしないといけない場合もあるかもしれないので余計に分からず困っています。

ソフトはEDIUSを使用しておりまして、VUメーター、ピークメーターの2種類がありますが見方やそれぞれの違いが分かりません・・・。

以前このブログでも書かれていたので拝見させていただきましたが、自分では理解できませんでした。。。

分かりにくい箇所や情報不足な面もあると思いますが、お時間があるときで構いませんので、教えていただけないでしょうか。





収録済みということなので、今編集されている物件に関しては、下記のような方法を取ってみてはいかがでしょうか?

マルチカム(2台以上のカメラで同時に撮影する)で収録の場合、ものにもよるが基本的にはベースになるカメラの音を基準にすべきです。つまり一様にすべてのカメラの音声をミックスするのではなく、ベースとなるカメラの音声を元にそのシーンで必要な音を他のカメラが捉えていたらそれを足すというのが、いいと思います。


質問の内容からは、具体的にどういう物事をマルチカムで撮ったのか読み取れなかったので、的を得ない回答になるかもしれませんが、ご了承を。




ドラマなどはセリフがベースとなりますから、セリフをベースに音楽、効果音、フォーリーを加えてゆきます。
コンサートの場合は、歌や音楽がベースとなるので、そこに観客の歓声や拍手などを加えてゆきます。

つまり我々がマルチカムで収録する場合は、必ずベースとなる音を収録してそれをベースとなるカメラ、またはすべてのカメラに収録します。(最近はカメラ以外のレコーダーに収録する場合も増えてきました。)そして効果として収録するべきベース以外の音は、別に収録しておいて編集時またはMA時に加えます。

例えば演劇を3台のカメラで収録するとします。そうすると、
1台は舞台全体を客席センター後方から狙うカメラ。(これがベースとなります)
2台目のカメラは、客席上手から主に演者の寄った絵を狙います。
3台目のカメラは、2台目と逆で、客席下手から。

ベースは基本的に舞台全体か、どちらかと言えば広めの映像を撮ります。場合によっては寄ることもあります。その他のカメラは基本的にはベースに比べて寄りめの映像を撮りますが、これも場合によっては広い絵をとることもあります。それは舞台の演出や収録側の演出によっていろいろです。

※舞台の場合は上手(かみて)、下手(しもて)と言う言葉を使います。舞台の右が上手で左が下手です。舞台以外でもよく使うので、これは覚えておいたほうがいいと思います。


こういう場合の音はというと、ベースとなるのが台詞になので、セリフをより明瞭に取れるようにマイクを立てます。
ミュージカルやコンサートの場合は、事前にお願いして、PAさんから音を分けてもらうことが多いです。PAをしない物はこちらで用意します。(マイクアレンジはまた別の話なので省略します)

そしてそのベースとなる音を基準に、編集時に必要な音を予め考えておいて、別途必要な音声を収録ためのマイクも立てます。
たとえば、観客の歓声や拍手が欲しければ、客席に向けてマイクを立てという具合です。

それらすべてのマイクを現場でミックスして、すべてのカメラに分配することもありますが、編集やMAを前提に収録する場合は、ある程度分割して収録する場合もあります。
具体的には、ベースとなるセリフはベースカメラに収録、観客の歓声や拍手を録音するマイクは、ベース以外のカメラに収録。それぞれを持って帰って、編集やMA時にミックスするというやり方です。
最近は、タイムコードで同期をかけてマルチトラックで別途音声のみを収録する場合もあります。しかしその場合でも、もしものためにベースカメラに音は送って収録してもらいます。

収録時に関してはこんな感じです。つまりある程度ベースとなる音を何かの方法で収録しておいたほうが、編集の時に助かりますよってことです。


話はそれましたが、質問のような場合、何を基準にするかといえばやはりメーターです。

VUメーターで基準となる印の付近を基準に、ピークメーターでレッドが点かないように調整します。

VUメーターはラウドネスメーターが登場するまで、人間の耳の感覚に近い針の動きをするメーターと言われてきました。わかりやすく言えば聴感メーターです。
それに対してピークメーターは、音の実際のピーク(最大値)を表示するメーターです。
(詳しくは書くとそれだけで膨大な文字数になりそうなので省略します。)

同じ音に対して見た目の動きの違いは、VUメーターよりピークメーターの方が大きく触れます。じゃぁどっちを基準にすればいいかといえば、日本の場合はVUです。VUが印のあるあたりを振れるように調整してください。ピークメーターはレッドゾーンに振り切ったら、「あ、音が割れるかも、注意しよう」という具合で目安程度に考えてもいいと思います。

極端な例で言うと、VUは触れていないのに、瞬間的にピークメーターがレッドゾーンに行くという事もあります。瞬発的な音に対してVUは反応しにくいので、そういった場合はピークメーターにも注意しましょうって感じです。


EDIUSの場合は緑のゾーンから黄色のゾーンがあって上の方は赤色になっていると思います。赤ゾーンは音が大きすぎて割れる可能性があるので、避けましょう。
緑から黄色に変わる辺りが基準だと思います。
(細かい音のレベルの話になると、また膨大な文字数になるのでコレも省略しますね)



レベルが適正になったら一度聴いてみてください。聞き取りやすいでしょうか?
聞き取りやすければいいのですが、一様に同じレベルで加算された音というのは、音の周波数帯域が被っていて聞き取りにくくなる場合が多いです。音が飽和しているという表現が分かりやすいかもしれません。

やはり、「見る側にどういう音を聞かせたいか」ということを念頭に置いていないと、ただ収録した音を混ぜただけでは、見る側に伝わり難くなります。

セリフを聞かせたければ、セリフを一番録れているカメラの音声トラックだけを選択したほうが、よりクリアに聞こえるはずです。
またイコライザーで低域を少しカットすることでも、明瞭度は上がります。低域のかぶりは明瞭度を下げるだけでなく、VUの振れも大きくなってしまうので嫌われます。

つまり、VUメーターを基準に映像に対して「何を聞かせるべきか」を考えて、音を選択し、ミックスすれば伝わる映像になりますよってことです。

ものすごく簡略に書きましたが、答えになったでしょうか・・・?